
2006年3月
インフルエンザの安心と注意

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
茨城県の鳥インフルエンザについては、ウインドレス鶏舎の淘汰が進んでいるようです。まだ油断はできないのでしょうが終息に向けて最終局面に向かいつつあるようです。
さて、新型の人インフルエンザは、豚の体内で、鳥インフルエンザと人インフルエンザが同時に感染してできた組み換えのウイルスが起源であるという学説があります。
北海道大学の喜田教授らの長年の研究で、現在では過去100年の間に起きた新型人インフルエンザは、ほぼすべてこの仕組みで生まれたものだということが分かっています。そして最近のマスコミの報道により、この話は多くの人々に知られるところとなってきました。
「ということは、養豚場の近くに住んでいると危ないんじゃないの」とか、「養豚場で働く人は新型人インフルエンザにかかりやすいの」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。結論から言えば大丈夫です。このような組み換えウイルスの出現は、少なくとも日本の養豚場のような環境では発生する可能性がないか、あっても無視できるほどの確率であろうと考えられます。ご安心ください。
通常、インフルエンザウイルスは、人には人の、豚には豚の、鳥には鳥のタイプがあって、それぞれの種のなかだけで流行しています。しかし例外的に、アジア南部の農家で見られるような、家禽と豚と人が非常に密接に接触するような飼育形態、庭先で鶏を絞めてさばくという生活環境においては、大量のウイルスが種の壁を乗り越えて鳥から人へ、人から豚へ、豚から人へと感染していくことが起こり得ます。新型インフルエンザの出現は、このように特殊な人間と動物の生活環境から生まれてきたもので、世界のどこでも起き得ることではないようです(もっとも1度どこかでできてしまえば、そのウイルスが短期間で世界中に広まる危険性は高いのですが…)。
このような心配と関連して、「毎年渡り鳥が飛んでくるころになると養豚場でインフルエンザの発生がある」という話も時々耳にします。豚インフルエンザウイルスを渡り鳥が運んでくるというストーリーは、一見なるほどと思わせる説得力はあるかもしれません。しかし専門家にその可能性を聞いてみたところ、豚から分離されるインフルエンザは明らかに豚型であり、渡り鳥から豚が感染したという証拠は今のところ報告されていないとのことでした。豚インフルエンザウイルスによる一過性の呼吸器症状は、日常的に全国で散発していると考えられますが、その感染源が渡り鳥である可能性はどうやらかなり低いようです。
それはさておき、豚インフルエンザの発生は今年も色々な農場で見られるようです。発生は一過性であるものの、その症状は、かなり重い場合もあり、場合によっては異常産を引き起こすこともあり得ます。発症が始まってしまってからの対策は効果が期待できませんが、このような呼吸器病が疑われた場合、少なくとも検査によって原因を知っておくことは重要です。感染極期であればウイルス分離も可能ですし、発症直後と回復期の血清検査をすれば抗体価の上昇でインフルエンザウイルスの感染であるかどうか判断できます。
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2006年3月号掲載
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