
2006年2月
PRRSワクチンの効用再評価

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
離乳後の事故の多発傾向は、まだまだ収まる気配が見られていません。とくに養豚密集地域での離乳豚の死亡は、前回も書きましたがPRRSを中心とした呼吸器症状と毒素原性大腸菌による浮腫病および離乳後下痢の片方あるいは両方が主因で、同一地域内では発症パターンが似かよっています。
ある地域では、離乳後のPRRS様症状がピークを越えると、その次にレンサ球菌による神経症状が多発する状況が見られ、このパターンが同じ地域の多くの農場で時期を前後して発生しています。このような農場に訪問したときには、過去に効果の見られたありとあらゆる方法を試していくわけですが、そのなかでも、PRRSワクチンの子豚への接種でうまくいきそうなケースを経験しました。
ご存知のとおり、PRRSワクチンは、母豚への接種については母豚群の抗体レベルを揃える目的で広く利用されていますが、子豚への接種については、子豚の移行抗体が切れて野外感染を受ける時期がばらついてしまった場合、接種時期の設定が難しいという問題点があります。このためワクチン本来の効果を発揮しきれないで、子豚接種を中止する農場も多いのが現状だと思います。
しかし先日お邪魔した農場では、徹底した母豚馴致と離乳豚の隔離により、離乳後30日間はPRRSの野外感染を全く受けない状態を維持していました。ところが、生後60日齢を越したところから感染が始まり、呼吸器症状とヒネ豚の多発による事故のピークを迎えてしまいます。本当に徹底した衛生管理を試みているにもかかわらず、この60日齢以降のPRRS症状は止めることができませんでした。そこで、過去に試してみたPRRSワクチンの子豚接種に再度チャレンジしてみることになったそうです。発症開始からさかのぼって30日以上前の3週齢ころにワクチン接種を行って、その豚群の様子を見たところ、従来のPRRS症状が全くなくなったわけではありませんが、かなり軽くなり、事故数も大きく減少しているようです。まだ安定した結果が出せるかどうか状況観察中ではありますが、手応えを感じつつあるそうです。
もともとPRRSウイルスは、感染後に中和抗体が上昇するのに非常に時間がかかることが知られています。ワクチン接種の場合も同様で、接種後に十分な免疫力を得るまで、文献によっては30日間必要だと指摘しています。逆に、この農場のようにワクチン接種後30日間以上野外感染を受けない期間を確保できている農場では、子豚へのPRRSワクチンの本来の効果が期待できそうです。どんなワクチンでも、そのワクチンの効果を発揮させるためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。PRRSの場合、その条件が何なのか、もうひとつ釈然としないため子豚への接種が難しかったようです。しかし、少なくとも上記のような条件が揃って、あとひと息60日齢以降でのPRRS感染をコントロールできれば…、という農場があれば、中止していた子豚接種についても再チャレンジする価値はありそうです。
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2006年2月号掲載
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