
2005年11月
同じ農場で浮腫病も下痢も

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
好調だった豚価もにわかに下がり、300円台に入ってしまいました。夏場の在庫をお持ちの農場ではしばらくは出荷頭数で勝負できるでしょうが、夏以降に繁殖の問題や離乳後の事故が多発した農場では辛抱の時期に入りました。
それにしても、各地で疾病の発生の話が絶えません。南九州では9月に来た台風以降に調子を崩した農場の話が多数聞こえてきます。強風から豚舎を守るため豚舎のカーテンを開けざるを得ず、その間、吹きっさらしのなかに残された豚が調子を崩すパターンです。不思議なことに、風雨にさらされたのはせいぜい半日〜1日なのに、その影響は1カ月以上経過してもなお継続しているということです。たった1回の管理の失敗(今回の台風のケースは決して失敗ではありませんが…)がその後、数ヶ月にわたる生産性の低下につながることをよく認識しておく必要があります。
また、この秋の豚病の傾向としては、やはり引き続き腸管感染症が多いということがあります。上記の南九州だけでなく、西日本、関東や東北でも離乳後の浮腫病や下痢による事故が増えているという相談が続いています。従来、浮腫病は浮腫病、下痢は下痢で独立して発症していたものが、ここ最近は浮腫病と下痢が同一農場で同時に発生するようになってきたようです。大腸菌の性状からすると、浮腫病を起こすシガ毒素(ベロ毒素)と下痢を起こすエンテロトキシン(STやLT)を同じ株が同時に産生しているケースが増えてきているらしいのです。また一段と対策が難しくなります。
この秋の学会や研究会などでも離乳後の大腸菌症の話題は数多く取り上げられています。抗菌製剤であれば何が有効であったか? 生菌剤は効果があったか? 有機酸はどうか? マンノースは? キトサンは? ワクチンは? と様々な対策が紹介されていました。しかし、どれをとっても、すべての農場の大腸菌対策に効果が出るというものはないようです。「この方法はA農場では効果を発揮したが、B農場ではぜんぜん効かなかった」、あるいは「最初のうちは非常によく効いていたが、数ヶ月後に再発してしまった」という話は枚挙にいとまがありません。むしろ、最初からオールマイティに効果の現れる対策はない、と覚悟しておくべきなのかもしれません。そうであれば、あとはどれだけ多くの対策案を手持ちに持っているかが鍵になります。もちろん根治へのアプローチとしては、過去からこのコーナーでも紹介している、生菌剤による正常細菌叢の改善が本道だと考えますが、この方法はいかんせん時間がかかります。当面の発症を抑え込むことができる対策を組み合わせていくことで、農場被害を最小限にとどめることが重要です。
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2005年11月号掲載
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