
2005年6月
PRRS対策で悩む離乳日齢

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
5月中旬から豚価が急騰しており、とくに「中」、「並」の価格が非常に高い傾向が続いています。さかのぼって考えれば10〜11月生まれの豚ですが、やはり昨夏以降の繁殖成績不振の影響が大きいのでしょうか。豚が高いのは結構なことですが、出荷豚が少ないのは困ったものです(だから高いわけですが…)。しかし、こんな時期でも通常どおり定時・定量出荷している生産者もおり、彼らに共通しているのはやはり母豚の飼養管理の的確さです。どんなに暑い夏でも授乳中の母豚にはしっかりと飼料を食い込ませています。朝5時からえさをやっている人もいます。1日4回給餌している人もいます。先月あたりから夏場対策について触れていますが、そろそろ本番が迫ってきました。
さて、今月はPRRSの話に戻ってみようかと思います。PRRSと母豚の関係です。もともとPRRSは繁殖障害を起こすウイルスですから、PRRSウイルス浸潤の激しい農場では母豚が早産を起こすことはそのとおりなのですが、母豚のコンディション(ボディ・コンディションはもちろん、毛艶、食欲、元気等々すべての面において)の悪い農場では、PRRSによる離乳豚の事故率も高めで、治りにくい傾向があります。
PRRSが発見された当初は、早期離乳、隔離離乳、SEWという言葉がやたらにもてはやされて、実際にそういった対策で事故が改善されたケースがたくさんありました。しかし最近では、むしろ離乳日齢は24〜25日に設定し、離乳後には分娩舎で1週間程度飼養するパターンが増えているようです。離乳体重の小さい豚や活力のない豚をできるだけ大事に飼養してから、離乳舎に移動しようということだと思います。驚いたことに、米国でも最近、離乳日齢は伸びる傾向にあるということを耳にしました。マルチサイトの農場でも18日齢から21日齢へ、さらに24日齢へといった傾向が増えているそうです。
しかし逆に、この方法によって思わぬPRRSの弊害に遭ってしまうケースがあります。一般的にPRRSの移行抗体の持続期間は、最長で21日齢程度です。そのため、それ以上の期間、子豚を分娩舎に置いておくということは、移行抗体の切れた(言い換えればPRRSに対し無防備な)子豚を母豚と同居させておくということです。すべての母豚がほど良い防御抗体を持ち、ウイルスも排出していない状態なら何も起きないはずです。しかし実際には、PRRS陽性農場の母豚群は、徹底的に母豚の免疫を揃えたつもりでも、防御抗体を持たない母豚やウイルスを排出している母豚がゼロとは言えません。そのような母豚と、移行抗体が切れた子豚の間でウイルスのキャッチボールが始まると、あとは制御不能な状態に一気に進んでしまいます。一生懸命に離乳豚を大事に飼養しているはずの分娩舎で、実はウイルスの増幅を手助けしてしまっているのです。1度こうなった離乳豚は、たとえその後、オールイン・オールアウトの離乳舎に移動しても、一定の割合で事故が継続します。同じ群のなかに既にウイルスを排出し始めた子豚が混じっているので、水平感染が起きるのは時間の問題です。離乳豚を大事に分娩舎で飼養しているのに事故が減少しない農場は、この点をもう1度考え直して、「最長21日離乳、かつ離乳と同時に移動」の方式に取り組んでみてはどうでしょうか。離乳体重の増加、離乳舎の環境改善等の課題にも同時に取り組まなければなりませんが、やる価値は大きいと思います。
●
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2005年6月号掲載
|