
2005年4月
浮腫病とアレルギー

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
先月の鼻かぜからそのまま花粉症の季節に突入し、厳しい毎日を送っています。豚の症状をわが身をもって思い知るパターンでいけば、花粉症で腫れた瞼とぼんやりした意識は、まさに流行中の浮腫病そのものと思われます。ことあるごとに豚の身に置き換えて考えるのは、そうすることによって農場での疾病解決の手がかりを少しでも多く得られるのではないかと考えるからです。浮腫病については、その発症病理に何らかのアレルギー様の機序が働いているのではないかと最近強く感じています。
この浮腫病(あるいはVero毒素産生大腸菌症)の発生が全国的に増加傾向にあるという話はこのコーナーでも度々紹介してきたことですが、とくにこの半年間は本病に対するお客様からのお問い合わせも非常に増えています。かつては南九州、関東での発生が目立っていましたが、ここ最近は地域的な差は見られず、文字どおり全国的な浸潤の様相を呈しているようです。この疾病の発症時期は、離乳直後から1〜2週間が最も多いのですが、農場によっては2〜3ヶ月齢で発症するケースもあり、バラエティに富んでいます。発症時期は、抗生物質等の投与によっても前後に移動することがあります。また、使用する抗生物質によっては、腸内で増殖した菌から一気に毒素が放出され、逆に事故数が急激に増加する危険もあります。
とりわけ最近よく耳にする失敗例は、農場内で神経症状が見られたので連鎖球菌症だと思いペニシリン系統の抗生物質を投与したら途端に死亡が増加したという例です。神経症状を起こす疾病としては連鎖球菌症が最もよく知られていますが、実はそれだけではありません。Vero毒素産生大腸菌でも神経症状は起きるのです。浮腫症状に対しては抗生物質の投与は注意が必要という点については徐々に知られてきているようですが、神経症状に対しては盲点になっているようです。
このように、疾病に対する対策は、その症状がどのような原因で起きたのかをしっかりと把握して行わないと、思わぬ失敗を起こしてしまいます。もちろん緊急対策は重要ですが、それと同時に専門の獣医師の診断、あるいは死亡豚や臓器を検査ラボで検査して、その原因をしっかりと特定しておくことも非常に重要です。
それにしても、なぜこのような腸管感染症が増加傾向にあるのでしょうか。冒頭に浮腫病が何らかのアレルギー反応と関係しているのではないかということを書きました。実は腸管には、身体全体の免疫担当細胞の約60%が集中しており、まさに体内最大の免疫組織なのです。話がやや逸れますが、養豚場におけるもう一方の最重要疾病であるPRRSも、最近話題のサーコウイルスも、免疫の低下に関与していることが知られています。これらのことをすべてひっくるめて考えると、農場内で発生しているこれらの疾病の多発について、豚自身の免疫の側に何らかの問題が生じているのではないかと気になっています。もちろん簡単に答えが出る問題ではありませんが、豚側の免疫状態という切り口で疾病を考える研究が進むことが望まれます。
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2005年4月号掲載
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