
2004年11月
せっかくの検査、幅広く戦略的に!

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
強力な台風のたび重なる上陸、そして新潟県の地震と、今年の養豚は疾病との戦いに加え、自然災害に対する戦いを強いられてしまいました。私が関わっている農場のなかにも、集中豪雨による土砂崩れで豚舎を失うなど、被害を受けられた方がおられます。心よりお見舞いを申し上げるとともに、農場の建て直しに立ち上がる姿を拝見し、そのたくましさに頭が下がります。どうかがんばってください。
ここまでには至らなくても、今年の雨に何らかの被害を受けた農場は少なくありません。問題なのは雨の被害を受けている間も、普段から農場にある疾病は通常時以上に豚群に悪影響を及ぼし続けるということです。豪雨によるストレスが母豚に加われば、哺乳豚に下痢が増え、離乳体重が下がってしまった離乳豚は呼吸器症状が発生しやすくなります。
お会いした生産者の方から「養豚場の最近の疾病はどうですか?」と聞かれることがよくありますが、最近の答えは決まって「良い農場と問題のある農場が2極化しています」となります。この「問題のある農場」が“問題”です。農場にもともと存在した疾病に、今年の場合はさらに豪雨のストレスや雨による体感温度の低下などが絡み合って、非常に複雑な状況に陥っているケースがままあります。最近の「問題のある農場」では、その“問題”を解きほぐすことが最優先事項です。事故多発農場を訪問すると、私の訪問前に既に色々と検査を実施されており、「うちにはPRRSはあるよ」とか、「溶血性大腸菌が出ている」などといった話を聞くことが増えてきました。
残念なことにそのうちのいくつかのケースでは、せっかく検査をしているのに検体が単発だったり、検査項目が不十分で、全体の状況が推測できないケースが多いものです。絡み合った疾病の糸を解くためには、計画的かつ総合的な疾病検査が必要です。総合的な疾病検査を行うにあたっては、以下の条件を満たしている必要があります。
| 1) |
血清抗体検査、死亡豚の臓器の病理検査、微生物学的検査、鼻腔内細菌検、ふん便検査、と畜場での臓器の検査など、想定される疾病をすべてカバーできるよう、できるだけ多方面の検査を組み合わせる。 |
| 2) |
血清抗体検査に関しては、離乳豚など、ある限定されたステージの事故であっても、母豚を含めた広いステージの豚をサンプリングすること。 |
| 3) |
検査結果に関しては、疾病検査の結果だけでなく、その農場の豚舎内の飼育環境データ(舎内温度や湿度、換気能力と収容密度など)等も合わせて広く判断する。 |
| 4) |
さらに、これらのデータの解析には、獣医師だけでなく農場の経営者、場長、飼育担当者、豚舎の設計者など、できるだけ多方面の観点の人間が参加する。 |
上記のようなポイントを踏まえ、定期的に総合検査を行っていけば、絡まった糸を解く材料が揃ってくるはずです。またこのような総合検査を日ごろから定期的に実施していれば、いざ何か起きたときにも、過去のデータが判断の大きな指標になります。この秋〜冬に、疾病と立ち向かうために、まず敵を知るための総合検査の実施をお勧めします。(列島豚病フォーラム)
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2004年11月号掲載
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