
2004年10月
真夜中の豚舎ツアーのススメ

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
記録的な暑さだった夏の終りくらいから、繁殖障害に対する問い合わせが増えつつあります。雄豚の精子の異常や乗駕欲の減退等は暑い盛りから起こるものですが、雌豚のほうの再発や発情回帰の遅れ、流産などの異常産はむしろ9月から10月以降にピークを迎えます。しかしほとんどのケースでは、雌豚にこのような症状が見られたあとから打てる対策は限られています。夏場にいかに種豚を涼しく過ごさせるかで、秋から冬の繁殖成績が決まってきます。何が言いたいかというと、夏場対策は春からはじめる、秋口の繁殖障害対策=夏の暑熱対策というように、養豚においては季節対策というものは常に先手先手を打つ必要があるということです。
ではこの秋にすべきことは何でしょうか? 一番先に頭に思い浮かぶのは呼吸器疾患対策です。特に今年のような猛暑の年には、豚も管理者も暑さになれてしまい、いかに豚舎内を涼しくするかに気を取られています。しかし猛暑の夏ほど秋口の日格差は大きく、豚へのストレスも大きくなりがちです。実際に出くわしたケースでは、夏場対策として天井の換気モニターを解放して豚舎内の熱を天井から逃がしている場合に、深夜から夜明け前までの気温低下時には、このモニターから逆に冷気がストレートに豚房に落ちて来ることがありました。この風はバカにできません。
ともすると天井モニターはその存在すら忘れがちで、朝の管理開始から夕方の終了時までは何事もないのですが、夜明け前に冷気がかなりの速度で豚を直撃していたのです。横方向からの風は、ペンの片方によることで逃げることができますが、上からの風は対処のしようがありません。逃げ場のない豚は冷風を一晩中浴びることになってしまいます。このようなことが2〜3日も続くと、豚たちは速やかに毛が伸び始め、咳をし始めます。あるいは下痢を起こすこともあります。
このほかにも夏場対策として通気を重視して開けた場所が、秋に肺炎の原因となった例は数知れません。そのきっかけは既に夏の終りから秋口に始まっているのです。夜中の豚舎に入ったことはありますか? 上記の天井モニターのように、昼間とは反対方向の空気の流れがあったり、夜中以降に予想していない豚舎環境になっている場合は意外と多いものです。
毎日は無理ですが、季節の変わり目に1回ずつ夜中の見回りをすると意外な発見があるかもしれません。「うちは豚舎内に自動温度計を設置して、24時間データを取っているから大丈夫」と言う方もいますが、豚舎全体が温度センサー設置場所と同じ環境であるとは限りません。快適なペンの隣では、隙間風がピューピュー吹いているかもしれません。「百聞は一見にしかず」です。この秋、真夜中の豚舎ツアーに出かけましょう。(列島豚病フォーラム)
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2004年10月号掲載
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