
2004年8月
病気をなくす世界潮流。豚コレラ騒動での日本の逆行を危惧

日清丸紅飼料(株)畜産研究所 検査センター 矢原芳博
関東は記録破りの暑さが続いていますが、豚達の食欲は落ちていませんか? 昨年はとくに東日本で冷夏だったので、夏場対策について抜けているところがないか、再度チェックが必要です。
話題は変わりますが、6月末から7月初めにかけて、ドイツのハンブルグで開催された国際養豚獣医学会(IPVS)に出席してきました。2年に1回、世界各国で開催されているこの学会は今回、57ヶ国から2800人以上が参加したそうで、非常に盛況な大会でした。微生物学を学ぶ私としては、専門雑誌に名前の載っているあの有名な先生、この世界的権威がそこかしこにたむろしており、そのうちの何人かとは直接話ができるという夢のような状況を満喫できた一週間でした。また逆に、「世界中のこんなに沢山の優秀な頭脳が豚病の制圧に関わっているのに、どうして養豚界から疾病がなくならないのだろう?」との素朴な疑問も湧いてきたのでした。
今回のIPVSで私が感じたのは、農場レベルでの疾病の撲滅による生産コストの削減について、いくつかの疾病に関しては実用段階に入りつつあるということです。もちろん日本でも、Spfという特定疾病の豚群からの排除のシステムは実行されていますが、必ずしもこのような生産ピラミッドを経なくても、マルチサイトやパーシャル・ディポピュレーション、モニタリング等の方法をうまく組み合わせ、PRRSフリー、内部・外部寄生虫フリー、胸膜肺炎フリー等のコマーシャル豚群がアメリカでも、ヨーロッパでもどんどん生まれているという発表が目立ちました。とくにヨーロッパでは、飼育規模の拡大によるコストダウンができないなか、さらに抗菌性飼料添加物の全廃も進むなかで、疾病による生産コストの上昇は大問題との認識が強く感じられます。
疾病撲滅への動きは、豚が実際に発症する病気だけでなく、サルモネラなどの公衆衛生上の問題まで含まれています。デンマークやドイツなどは、国家ぐるみの問題としてサルモネラの汚染度を下げるプロジェクトを進行中です。このような努力により、ひいてはその国で生産される豚肉の安全面でのクオリティの向上、豚肉の国際競争力の向上を目指していると聞き、先を見通した確かなものの考え方とそれを推し進める実行力に関心しました。またドイツでは1990年代に発生した豚コレラの制圧に長い年月がかかってしまった反省から、各連邦州ごとに24時間体制の疾病監視センターが設けられており、そのうちの1つを見学させてもらいました。これぞリスクマネージメントのお手本と感じられるシステムで、「ゼロリスク」にこだわる某国の体制が本当に稚拙に感じられました。海外に行くといつも隣の庭が美しく見えるのですが、今回はとくに、疾病コントロールに対する方向性の明確さが、うらやましく感じられました。
この原稿を書いている今日、豚コレラが疑われる事例が発表されました。本誌が発売になるころには、何らかの結論が得られていることと思われますが、日本では少なくとも「だから豚コレラとは共存するしかないんだ」という方向に議論が逆戻りしないことを祈るばかりです。欧米では養豚場からあらゆる疾病をなくする方向に走り出しているのですから。(列島豚病フォーラム)
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「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2004年8月号掲載
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