日清丸紅飼料株式会社
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No.80442
豚舎の洗浄・消毒はピッカーまで

 すっかり春めいてきたこの頃ですが、季節の変わり目で日毎の気温の差も大きく、多くの農場でPRDCによる事故が目立つ時期でもあります。また、3月中旬にはPCV2のワクチンも発売され、接種を始めた農場ではその効果を待ち遠しく思っているという話をあちこちで聞きます。PRDCの対策としては、各疾病に対するワクチンも有効ですが、ワクチン以外の一般衛生対策も重要だということは皆さんも様々な情報からご存知かと思います。

 一般衛生管理については、マデックの20の法則を以前のトピックスNo.70539「豚サーコウイルス2型って何?(その4)〜PCV2対策について」で紹介させていただきました。この法則の中に、「ピット下の洗浄・消毒」という項目があります。豚をアウトした後、豚房はもちろんピット下も洗浄・消毒しようというものですが、今回はさらに加えてピッカーの洗浄・消毒をご紹介します。

 実際にピッカーの洗浄・消毒作業を行ってみました。(以下は一例です。ピッカーのメーカーや仕様によって部品等は異なります)

(1)水道の元栓を締めた後、レンチを用いてピッカーを取り外す。
(2)キャップ・メッシュ・スプリング・作動棒・Oリングなどの部品に分解する。
(3)各部品(特にメッシュ)につまったゴミを取り除き、流水で洗浄する。
(4)逆性せっけん消毒液に浸す。
(5)十分に乾燥させた後、元通りにピッカーを取り付ける。

 豚舎の壁やスノコ等は比較的洗浄しやすく、汚れや病原体を落とすのもそれほど難しくはないようです。一方で、ピッカー等の細かい隙間の多い器材を洗浄するのは、手間も時間もかかり大変な作業です。しかし、十分に消毒・乾燥させた豚舎でも、ピッカー内の水道接合部は水分が残っていることが多く、ここに乾燥に弱いウイルスや細菌が残っていることも考えられます。せっかくきれいな豚舎に豚を入れても、ピッカー内に残っていた病原体が感染する可能性もあります。長年取り付けたままのピッカーをはずす作業はかなり力が要りますが、毎回のアウト後に実施すれば、それ程大変ではなくなると思います。また、メッシュ部には予想以上にたくさんのゴミがつまっており、これをとり除くことで流量の確保にもなります。

 面倒な作業ではありますが、すでに作業のひとつとして実施している農場もあります。衛生管理の徹底に向けて、できることから始めてみてはいかがでしょうか。なお、作業終了後に水の元栓を開ける事をくれぐれも忘れないようにしてください。

(文責 検査センター 鶏尾めぐみ)

検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.80341
ホルマリン燻蒸を見直す

 農場では、様々な場面で消毒が日常作業として行われているものと思います。それぞれの場面と目的に応じて消毒薬や消毒方法を選択しますが、今回はそのような消毒方法のなかでも、特にアウト後の畜舎消毒の仕上げとして、ホルマリン燻蒸を見直してみたいと思います。

 ホルマリン燻蒸は、密閉した室内で、ホルマリン(ホルムアルデヒド35%液)に過マンガン酸カリウムを加えることでホルマリンガスを発生させ、室内全体に充満したホルマリンガスで消毒を行う方法です。ホルマリンガスの消毒効果は、他の消毒薬と比較しても非常に強力であり、なおかつ、液状の消毒薬の散霧では消毒しきれない細かい隙間や天井裏などの消毒が出来ることから、アウト後の畜舎の消毒の仕上げとして非常に有効な方法です。

 しかし一方で、ホルマリンガスの毒性(組織刺激性)が強く、隣接している畜舎へのガスの流入など、取り扱いに注意が必要な点で、最近はあまり行われなくなりつつあります。

 ここ数年、豚のPRDC(豚呼吸器病症候群)など対処の難しい疾病が増えており、一般衛生管理の徹底が重要視される中、しっかりとオールイン/オールアウトを行いつつ、仕上げにホルマリン燻蒸により確実に舎内の病原体をリセットする効果は非常に大きいと思います。

 ここに具体的なホルマリン燻蒸の方法をご説明しますので、充分な安全を確保した上で、農場の衛生対策に組み込んでみてはどうでしょうか。

●ホルマリン燻蒸の具体的方法
(1) 畜舎外側から、入排気口、カーテン、糞尿排出口などをビニールとガムテープでしっかりと目張りする。
(2) ホルマリンと水を入れたスチール缶(20リットル)を通路に沿って数ヵ所に並べる。(畜舎体積1立方メートルあたり、ホルマリン40g・水60ミリリットルを混合する)
(3) 過マンガン酸カリウムをビニール袋に入れて(2)の各スチール缶の横に置く。(畜舎体積1立方メートルあたり、過マンガン酸カリウム20g)
(4) 軍手、マスク、ゴーグルをして、奥から(2)に(3)を入れていく。すぐに突沸(急な沸騰)が始まるので、奥から出口の順に迅速に作業を進めていく。
(5) 速やかに出口から退出し、出口も目張りする。少なくとも24時間以上そのまま放置する。
(6) マスク、ゴーグルをして目張りを取り除く。排気ファンがある場合はファンをまわす。カーテンの場合は全開として、そのまま2日間以上放置する。
(7) 室内に入ってみて、刺激臭が充分に飛んでいることを確認した後に動物を導入する。
 なお繰り返しになりますが、ホルマリンガスの組織刺激性は非常に強いので、動物がいる畜舎での燻蒸、あるいは完全に密封できない畜舎での燻蒸は危険です。また作業時のゴーグル、マスクなどの保護具の着用も必ず実施して下さい。

(文責 検査センター 矢原芳博)

検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.71240
豚サーコウイルス2型って何?(その5)
PCV2ワクチンのその後について


 PCV2についての解説を今年4回継続しましたが、その後しばらくのお休みを頂き真に申し訳ありませんでした。

 さて、PCV2特集(その4)の文末で、日本でのワクチン発売の見込みについて書きましたが、ここ数ヶ月で状況が大きく変化してきました。日本養豚生産者協議会(JPPA)などの養豚団体が中心となって、PCVワクチンの早期発売を促す運動が繰り広げられ、ワクチンメーカーもこれに呼応して、申請を急ピッチで進め、農水の承認までの期間も大幅に短縮される可能性がでてきました。うまくいけば2008年の早い時期に、国内の養豚場でPCV2ワクチンが使用できるめどが立ちつつあるようです。

 そこで、インターネットで入手できる情報から、現在北米またはヨーロッパで発売(あるいは試験的発売)されている4種のPCV2ワクチンについて、下表に簡単にまとめてみました。現在、下記のうちの数社が日本での承認を受けるべく活動中ということです。下表のワクチンのどれが最終的に日本で承認されるか、下表のままの形で国内承認されるかについては現在のところわかりませんが、情報の整理に繋がれば幸いです。

現時点で欧米で発売(あるいは試験的に発売)されているPCV2ワクチン
メーカー ベーリンガー
インゲルハイム
インターベット メリアル フォートダッジ
名称 Ingelvac(R)
CircoFLEX(TM)
Circumvent(TM)PCV Circovac(R) Suvaxyn(R)
PCV2 One Dose
生/不活化 不活化 不活化 不活化 不活化
接種対象 3週齢以上の
健康な子豚
3週齢以上の
健康な子豚
健康な母豚 4週齢以上の
健康な子豚
接種量/回数 1ml/頭
1回
1ml/頭
2回
2ml/頭
初回分娩前2回
以後分娩前1回
2ml/
頭1回
現時点で使用可能な国 合衆国
カナダ
合衆国
カナダ
ヨーロッパ
カナダ
合衆国
*アイオア州立大学HPの情報を基に簡略化
http://www.vetmed.iastate.edu/departments/vdpam/swine/diseases/pcv2/associated_diseases/control/vaccines.asp

(文責 検査センター 矢原芳博)

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No.70539
豚サーコウイルス2型って何?(その4)
PCV2対策について


 PCV2についての4回目は、PCV2対策について述べたいと思います。といっても、現時点でPCV2に対して完全な対策というものは見つかっていません。世界中で試行錯誤の真っ只中といった状況です。ここでは飼育環境からPCV2対策を捉えた「マデック博士の20原則」とワクチン開発の現状について取り上げたいと思います。

1. マデックの20原則とは?

 1998年にフランスのマデック博士がPMWSに対処する方法として、飼育環境の改善に着目して、以下の20の原則を守る事を提唱しました。その内容は以下のとおりです。

●マデックの20原則
 分娩ステージ
 (1)ロットごとにピット下を洗浄消毒する。(部屋毎のAI/AOの徹底)
 (2)分娩前に母豚を豚体洗浄する。寄生虫対策を必ず行う。
 (3)里子の原則禁止
 離乳ステージ
 (4)1豚房当りの頭数は13頭以下。ペンの間仕切りは壁にする。(直接接触防止)
 (5)ピット下の洗浄・消毒、AI/AO
 (6)飼育密度は1・あたり3頭まで(離乳直後)
 (7)エサ箱の広さは子豚1頭当り7cm以上
 (8)空気の質の維持(アンモニア濃度10ppm以下、CO2濃度0.15%以下)
 (9)温度管理の徹底
 (10)ロット間で豚を混ぜない
 肥育ステージ
 (11)1豚房の頭数は出来るだけ少なく、ペンの間仕切りは壁にする。
 (12)ピット下の洗浄・消毒、AI/AO
 (13)離乳豚期の豚房と混飼しない。
 (14)ロット間で豚を混ぜない。
 (15)空気の質の維持(アンモニア濃度10ppm以下、CO2濃度0.15%以下)
 (16)温度管理の徹底
 その他
 (17)適切なワクチネーションプログラムの立案と実行
 (18)豚舎内の空気の流れ、豚の流れを適切に
 (19)厳格な衛生管理(去勢時、注射時等)
 (20)病豚はできるだけ早く隔離部屋に移動させる。


 PMWSやPCVADなどに対して、従来の化学療法的な手法がうまく行かない事はこれまで述べてきたとおりですが、フランスではこの20原則をできるだけたくさん守る事で、PMWSの被害が軽減できているということで、現在では世界中にこの原則が伝えられています。免疫を壊すようなウイルス病対策として、豚の飼育環境面からメスを入れた考え方は斬新でもありますが、良く考えればそのどれをとっても養豚の基本です。初心に帰る意味でも以下の20原則をもう一度チェックしてはいかがでしょうか。

2. ワクチン開発の現状は?

 PCV2はウイルスですから、ワクチンの開発も進んでいるようです。ヨーロッパの一部と北米では、既に試験的に農場で使用されているということです。現在開発中のワクチンはいずれも不活化ワクチンで、母豚に接種して移行抗体で子豚を守るタイプと、子豚に直接接種するタイプがあるようです。しかしいずれのワクチンも日本で発売されるとしても、早くても数年後になると考えられます。

 以上、4回にわたり最近話題のPCV2について取り上げてきました。特に今回ご紹介したマデックの20原則については、次々と増える豚の疾病に対し、病原体毎に対処するのではなく、病原体があっても発症しないような飼育環境作りが大事であるという教訓だと思います。養豚の原点に立ち返る考え方として私たち自身もしっかりと吟味したいと思っております。(このコーナーの20原則の日本語訳は、先日来日したマデック博士のセミナー資料を基に、矢原の意訳が多少含まれています。マデック博士の正確なニュアンスをお知りになりたい方は、英語版をご参照ください。インターネットで入手できます。)

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.70438
豚サーコウイルス2型って何?(その3)
PCV2の診断はどのように行うか


 巷ではあちこちでサーコウイルスによる被害の話を聞きますが、必ずしもしっかりとした診断を行っていないケースも多いようです。農場内で発生している疾病の主因がPCV2であるというためには以下のような条件が必要です。

1)個々の豚をPMWSと診断するための3条件とは?
 離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)は病名のとおり、離乳後に複数の臓器の機能が悪化して、発育が極端に悪くなる疾病ですが、生産現場では似たような臨床症状を示す疾病はたくさんあります。アイオワ州立大学のDr. Sordenらは、PCV2によるPMWSであることを診断する条件として

(1)離乳後に発育不良を起こし、その症状がどんどん進行する
(2)病理組織検査で特徴的な病理変化(葡萄房状の封入体等)が見られる事
(3)病変部位からある量以上のPCV2が検出される事
の3つを提唱しています。
 逆に言えば、生産現場において、病豚を目の前にしてPMWSを診断する事は専門家でも非常に難しい事だといえます。

2)農場単位でPMWSが発生していると診断する目安は?
 農場内でPMWSが問題となっているかどうかを判断する事は、個々の豚を診断する事以上に難しい事です。というのも、PCV2の農場の抗体陽性率は、日本でも90%を越えており、ほとんどの農場内でPCV2の感染が起きているのが現状ですが、抗体陽性の農場のすべてでPMWSが発症している訳ではないからです。ですから単純に抗体検査をして、うちの農場はPMWSがある、という判断は出来ないわけです。
 これまでに様々な農場陽性の定義というものが提唱されていますが、動物衛生研究所の川嶌らによれば
(1)通常の範囲を超えた削痩を主徴とする疾病の発生
(2)個体でのPMWSの確認
(3)削痩や死亡の原因となるほかの病原微生物の確認
(4)流行型、常在型、散発型の分類
の4段階を経て農場のPMWSを診断する事を提唱しています。

3)PMWS対策は、まず的確な診断から
 PCV2が原因と考えられているPMWSという疾病は、まだまだわかっていない事が多く、分からない事が多いということは診断する事も難しいという事です。PRRSの時もそうでしたが、しっかりとした診断をしないまま、様々な症状をPMWS(PRRS)のせいにして諦めてしまったり、誤った対策に走ってしまったりする事も時々見かけられます。まずは的確な診断を下す事から対策の第一歩が始まります。

*今回の情報はピッグジャーナル07年3月号の川嶌先生の記事を参考にさせて頂きました。診断定義の語句については一部平易な表現に変更しました。詳しくは原著をご参照ください。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.70337
豚サーコウイルス2型って何?(その2)
PCV2が原因と考えられている疾病について


 前回から豚サーコウイルス2型(PCV2)について、現時点での情報をまとめておりますが、今回は、PCV2が原因と考えられている疾病について整理したいと思います。

1) PMWS(離乳後多臓器性発育不良症候群;いわゆるヒネ症候群)

 PMWSは1990年代後半にカナダで発見され、その後北米に広がり、フランス、スペインを初めとした欧州各国でも報告されています。PCV2が原因と考えられる最初の疾病として知られています。現在では世界各国で発生が確認されており、日本でもその発生率は高いといわれています。
 離乳後に発症し、食欲や元気が消失して削痩が始まり、発育が停滞あるいは、逆に体重減少を起こし、1ヵ月足らずで同一ペン内の子豚の体重差が著しく大きくなってしまいます。事故率も増加し、離乳後事故率では10%を越え、ひどい場合には単月で50%を超える農場もあります。PCV2は免疫抑制を起す事が知られていますが、このためにPMWSは2次感染を伴う事が非常に多く、被害が大きくなる傾向があります。PCV2がリンパ節で増殖する事から、リンパ節の腫大や出血などの病変が特徴的です。黄疸症状を伴う事もあります。ヒネ豚の体表が黄色く見える時はPMWSの可能性があります。

2)PDNS(豚皮膚炎腎症症候群)

 離乳〜肥育期にかけて体表に紫斑状の発赤が現れ、症状の重い豚は死亡します。解剖すると腎臓には典型的な点状出血が見られます。

3)PNP(増殖性壊死性肺炎)

 PCV2による肺炎は外見的あるいは剖検上で特徴的な病変は無いのが普通です。通常は同時に感染している病原体による病変が表面上に現れますが、特にPRRSウイルスとの共感染で、組織病変として増殖性壊死が見られます。

4)その他のPCV2が関与していると思われる疾病

 それ以外にも、PCV2が関与していると考えられている疾病は多岐に渡り、流産(妊娠早期)や下痢の報告も確認されています。さらに確証は得られていないレベルではありますが、ダンス病やスス病の原因であるという説も提唱されています。

 以上、PCV2が関わる様々な疾病について整理してみました。これらの疾病は他の病原体と共同で現れるケースが多いとされ、特に米国の研究者の間では、これらの疾病の総称として、PCVAD(豚サーコウイルス関連疾病)という呼び方に統一する事を提唱しています。PCV2が関わる疾病も複雑ですが、それらの疾病に関する用語も複雑であり、この拙文で少しでも整理ができれば幸いです。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.70236
豚サーコウイルス2型って何?

 最近、養豚雑誌をにぎわせている豚サーコウイルス2型(PCV2)ですが、本当に日本中で大きな問題になっているのでしょうか。その前に、豚サーコウイルス2型とはどんなウイルスなのでしょうか。どのようにして病気を起すのでしょうか。今回は、豚サーコウイルス2型の基本について再度確認をしてみたいと思います。

1)豚サーコウイルス2型(PCV2)とはどんなウイルス?

 PCV2は、ウイルスの中でも非常に小さいウイルスで、DNAを遺伝子に持つウイルスです。この事は、野外で消毒薬に比較的強い事、遺伝子の変異は比較的少ない事を意味しています。サーコウイルスは自然界では多くの動物の体内から見つかっており、豚のサーコウイルスも豚の体内から高率に検出される常在ウイルスです。豚サーコウイルス(PCV)は、1型と2型に分かれており、1型には全く病原性が認められません。ですから現在養豚場で問題となっているPCVはすべて2型です。そのためこのウイルスをPCV2と省略して示しています。実はPCV2も既に世界の多くの国々の豚の間に高率に浸潤している事が分かっています。日本においても農場の抗体陽性率は90%以上であると言われており、PRRSウイルス以上の浸潤度なのです。

2)PCV2はどのようにして病気を起すのでしょうか?

 実はPCV2は、PCV1と同様に、健康な豚に単独で感染させても何の病気も起しません。どうもPCV2が豚に病気を起させるためには、さらに何か引き金になるものが必要だと言われています。現在のところ、それが何であるか完全に特定はできていませんが、PRRSウイルスやパルボウイルス、さらにはある種のワクチンに含まれるオイルアジュバントなどの影響が疑われています。PCV2による疾病は、まさに「日和見」的な感染といえます。ですから農場の子豚が高い抗体を保有しているにもかかわらず、健康に育っているケースも珍しくありません。今後の研究で、この「引き金」となるものが何なのか明らかにされる事が望まれています。

 反面、現在養豚場で見られる重篤な症状の離乳豚を解剖し、ウイルス分離や遺伝子診断、あるいは病理組織検査を行うと、各種の臓器(特にリンパ系組織)から大量のPCV2が検出され、非常に特徴的な病変が観察されます。リンパ節の中のリンパ球がウイルスに攻撃されて極端に少なくなってしまうために、子豚体内の免疫機能が低下する、いわゆる「免疫抑制」状態におちいってしまいます。このことがPCV2によって起きる疾病の厄介さの大きな理由になっているのです。  さらに次回号では、PCV2によって起きる様々な疾病の形について説明していきたいと思います。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.61235
冬場の寒さ対策のアイディア集

 今年最終のトピックスですが、お読みになる皆さんには、「明けましておめでとうございます。」かもしれません。
 前回の話題は、豚舎のすきま風をいかに防ぐかでした。12月も各地の農場を訪問させていただきましたが、感想を一言で述べれば、「寒い!!」の一言です。南九州はさぞ暖かいのだろうと思って行ってみたら、豚舎は寒いです。すきま風対策の必要な農場はまだまだ多いと感じました。先月号を又読み返してもらえればありがたいです。
 今月は、すきま風対策以外にも、豚を暖めるちょっとしたアイディアについて書いて見たいと思います。そのままやってみるも良し、ヒントだけでも得ていただければ幸いです。

その1 夏場のペットボトルは、冬には湯たんぽになる!
 夏場に母豚の暑さ対策に冷凍して使っていたペットボトルは、今どこにありますか?熱湯は無理ですが、程々の熱さのお湯を入れて、分娩舎の保温箱や離乳豚房に置いておくと、寒がっている子豚が抱っこして寝るようになります。床暖房は無くてもそこそこ保温できます。最初にこの話を聞いたときには、夏の使用法以上にびっくりしました。

その2 やっぱり保温箱!その応用例は徐々に増えています。
 「また保温箱の話か」と言わないでください。ここしばらくは養豚場を訪れるたびに保温箱の話を繰り返し繰り返し勧めています。分娩舎は当然のことながら、離乳舎でも非常に有効です。この豚房にどうやって保温箱なんか取り付けるんだ!と言うような豚房にも、アイディア一つで保温箱が設置できます。たとえば狭い高床ケージは、柵を取っ払って2ペンをつなげてしまい、片方のペンを箱にしてしまいます。ここに2ペン分の子豚を収容しても、かなりの確率でうまく行きます。入り口は当然ビニール製ののれんです。厚さ1mm以上(できれば2mm)の透明なビニールを20cm幅に切って、入り口全面にのれん状に取り付ければ、箱の中も良く見えて管理も楽です。何よりも豚がどこからでも出入りできるので、弱い豚でもちゃんと中に入って温まれます。箱の形は正方形でなくても、細長い長方形でも、コーナーを利用して三角形でも大丈夫です。但し保温箱の中には、給餌器や給水器は無い方が良いでしょう。

その3 屋根の明り取りは返って逆効果?
 冬場の豚舎の保温のために、屋根材の一部を透明な材質にしているケースを見かけます。日光を豚舎に取り入れる事で豚舎内を暖めようと言う考えでしょうが、確かに天気の良い昼間は温まりすぎるほど温まります。しかし逆に夜は、その材質のせいか温度が下がるのも急激です。このために日格差が大きくなりすぎて、返って子豚にはストレスがかかってしまいます。豚舎に人のいない夜〜朝方にかけて子豚をどうやって暖めてやるかが大事です。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.61134
冬場のすきま風対策について

 今年もあっという間に12月になってしまいました。冬本番を迎え、各農場では大なり小なり、いわば「冬場対策」といわれるものを行っていますが、備えは充分にできていますか。特に呼吸器病対策として、すきま風対策を再チェックしてみてはどうでしょう。

 開放豚舎では、豚舎の至る所からすきま風が侵入してきます。PRRSなどの呼吸器病に感染すると、風に対する豚の抵抗力が落ちてしまいます。ほんの微風なのに極端に寒がっている子豚は豚舎にいないでしょうか?人間だって風邪をひいて熱があるときには、部屋をかなり暑くしてもまだガタガタ震えます。出来るだけ丁寧に、豚舎の細かい穴まで塞ぎましょう。小さな穴ほど、そこから入り込むすきま風の風速は早くなります。速い風ほど子豚には毒です。また風の吹き込む豚房では、子豚が平床をすぐに汚します。夏場はともかく、冬に子豚が濡れると気化熱が奪われるため体感温度がさらに下がってしまいます。濡れている豚が居る豚房には、風が吹き込んでいる可能性が高いので、その豚房を中心にすきま風の原因を突きとめましょう。

 また、天井の排気モニターは開放のままではないですか?冬でも昼間は、豚舎内の温まった空気が真上に抜けていく方向で換気ができているかもしれませんが、真夜中には必ず真上から冷気が下がってきているはずです。天井モニターは冬場は閉め切っても問題ない場合が多いので、目張りしてしまってはどうですか?閉じきる事ができない場合には、天井モニターの真下をコンパネ等で遮って、真下に直接冷気が下がらないようにするのも方法です。

 ウインドレス豚舎では、排気ファンの回転を舎内温度で制御している場合、寒くなってきたので温度設定は変えずにファンヒーターを動かしたら、急に子豚が咳をしだしたというケースがありました。ヒーターで急に舎内温度が上がったため、排気ファンが全速で廻り始め、豚舎内に風が吹き荒れている状態です。こんな状態が数時間も経過すれば、離乳豚ならすぐに毛が伸びて豚が死にだします。温度と換気のバランスは本当に微妙なものです。ファンの設定は温度という数字で決めるのですが、これは決して「自動」で環境がコントロールできるという事ではなく、バランスが保たれているかどうかのチェックは人間でなければできません。

 分娩舎の保温箱には蓋がついていますか?上からガスブルーダーやコルツヒーターが吊るしてあったとしても、冬場には屋根が必要です。また手作りの保温箱の場合、建て付けが悪くて風が入ってしまう箱はありませんか?冬場なのに保温箱の中を糞尿で汚すペンでは、すきま風が吹き込んでいる可能性があります。離乳舎の保温箱も同様にチェックが必要です。

 以上、本格的な冬が来る前に対策を終えておきましょう。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.60933
飼料を食い込ませるために(ウエットフィーダーの場合)

 前回から給餌器の調整についてご紹介していますが、今回はウエットフィーダーについて考えてみたいと思います。ウエットフィーダーは1980年代後半頃から輸入品が紹介されると、すぐに国産の様々なタイプも紹介され、現在では多くの農場で採用されています。ウエット給餌では、(1)1頭口あたりの飼養頭数を多くできる。(2)飲水量、特にこぼし水が少なく汚水処理設備への負担が少ない。等の長所があるといわれておりますが、長所を生かせるのも適切な調整があっての事です。以下の点について再チェックしてみてはどうでしょうか。

1)必要な口数が用意されているか?
 ウエットフィーダーの場合、ドライフィーダーと比較して飼料摂取速度が速くなるため、1頭口あたりの給餌頭数は多く設定できます。一般的に1頭口あたり8〜10頭が適当といわれています。多すぎると発育速度や体重のばらつきに影響がでるのはドライフィーダーと同じです。

2)取り付け場所は適当か?
 設置場所についてはドライフィーダーと同様です。特に2頭口の場合、豚房の隅に設置したため、片方の口では豚が十分に頭を入れられない状態になっているケースを見かけます。また最近、離乳〜子豚期の給餌器では、円形で周囲がすべて給餌口になっているタイプがありますが、このタイプも豚房の面積が十分ないとすべての口が有効に使えません。

3)こまめな調整と清掃が大事
 ウエットフィーダーでは飼料の出る量の調整は特に重要です。調整がまずいとすぐに飼槽が飼料でいっぱいになってしまいます。ウエットの場合、そこに水が同時に溜まるので、特に夏場はあっという間に腐敗してしまいます。また飼槽内に水と飼料がいっぱいになると、給水器のピッカー部分が埋もれてしまい、水も飲めなくなってしまいます。飼槽の清掃はドライ以上にこまめに行う必要があります。

4)給水器の水圧について
 給水器の水圧が強すぎると飼槽にすぐに水が溜まってしまいます。減圧弁により水圧を落とすか、フィーダーについているコックを使って最良の水量を調整する必要があります。メーカーの推奨よりも大きい減圧が必要な場合もあります。また豚房内にはウエットフィーダーの給水器以外にも給水器を設置する事をお勧めします。大きく減圧している場合は特に必要です。逆にフィーダーの給水器を止めている農場もありますが、その場合このフィーダーはドライフィーダーと同じです。多くの場合、口数不足になってしまいますのでご注意下さい。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.60732
飼料を食い込ませるために(ドライフィーダーの場合)

 9月に入り酷暑期をようやく通り抜けて、さあこれから子豚に飼料をたくさん食い込ませなければならない時期です。しかし、いざ食い込ませようと思っても、子豚がしっかりと食べられる環境がそろっていないとどうにもなりません。特に給餌器そのものの調整は、子豚の飼料摂取量に大きな影響を与えます。給餌器の形態は様々ですが、今回はドライフィーダーの場合について考えてみたいと思います。

1) 必要な口数が用意されているか?
 ドライフィーダーの場合、通常一頭口あたり3〜4頭が適正な飼養頭数であるといわれています。各豚房の給餌器の口数は充分足りていますか?口数が足りなければ、特に弱い子豚が充分飼料を食べる事ができずに、1ペン内の子豚の体重のばらつきが大きくなってしまいます。

2)取り付け場所は適当か?
 通常はペン内の通路に近い場所に設置します。豚が給餌器に正対して食べられるように設置してください。また複数の給餌器を豚房内に設置する場合、給餌器同士を離すと、片方は全く使用されず、糞尿をされてしまうこともよくあります。豚房の形や床の形状等によって、ベストの設置場所は様々だと思いますので、設置後の食べ方をよく観察する必要があります。

3) こまめな調整と清掃が大事
 給餌器上部のタンク部分から飼槽に落ちる餌の量はこまめに調節しなければなりません。出過ぎれば飼槽が飼料で一杯になり、あふれて無駄になったり、食べきれずに腐ったりします。逆に飼槽の部分への出が悪いと食べたい量が充分に供給できません。飼料を変更したり、頭数が変わったりした場合はもちろんですが、普段からちょくちょくと飼料の出方を調整しなければなりません。一度飼槽に溜まってしまった古い飼料はすぐに腐ってしまいます。子豚は腐ってしまった飼料は食べませんし、疾病の元にもなりかねません。こまめに飼槽を掃除してください。

4)給水器について
 給水については、それだけで過去に本トピックスにも取り上げられた話題であり、非常に重要な問題であるといえます。水の話を始めたらきりがなくなってしまうので別の機会に改めて取り上げたいと思いますが、ドライフィーダー設置農場の場合、ペン内の飼養頭数10頭につきピッカー1個以上を設置すべきです。給水器の数、高さ、流量について常に注意を払ってください。

 以上、当然の事ばかりで恐縮ですが、チェックのきっかけにしていただければ幸いです。

(文責 検査センター 矢原芳博)
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No.60731
夏場は母豚の飲水管理が重要
〜飲水量と泌乳量の関係〜


 8月に入り、関東〜九州は突然梅雨が明けるとともに気温が急激に上昇してきました。農場では夏場対策として、
(1) 石灰の豚舎全体への塗布
(2) 寒冷紗の有効利用
(3) ダクトファンの設置
(4) ドリップクーリング(ペットボトルを凍らせる方法が流行中です)
(5) 補助栄養剤の飼料添加等
を実施している方も多いと思います。しかし、母豚の飲水は最も重要であるにも関わらず、見落されがちの上、流量が確保できずに対策が難しい農場も多いかと思います。

 授乳期間中の哺乳豚1頭あたりの必要乳量は、1日で約500mlと言われているので、10頭の子豚を抱えた母豚は1日に約5リットルの泌乳量が必要です。また、母豚が1リットルの乳を産生するのに必要な飲水量は約4リットルと言われているので、5リットルの泌乳に必要な飲水量は20リットルにもなります。これに母豚自身の代謝に必要な水分を考慮すると、母豚が1日に必要な水は30リットル近くになります。

 母豚の水分が不足すると、水分不足→脱水→腎臓への血流不足→腎炎・膀胱炎・乳房浮腫・陰門部浮腫等を発症しやすくなります。夏の分娩時に母豚の飲水量が不足すると、陰門部の浮腫などから有害菌の感染が起こりやすく、感染した有害菌の毒素は体内に放出され、循環器系の障害と共に泌乳停止に陥り哺乳の継続は不可能となります。夏場の母豚は常に脱水に陥りやすい環境にあることを理解した上で、管理をすることが大切です。一般的に母豚の飲水流量はストール(妊娠豚舎)では1分間に1.5リットル以上、分娩舎では1分間に2.0リットル以上が必要と言われています。飲水量と流量は強い相関関係があり、流量が少ないと豚は水を飲むことをあきらめてしまいます。水圧の調整やピッカーのつまりのチェック等をして、豚がストレス無く水を飲める環境を与えてあげてください。

表1 母豚の泌乳量(ランドレース種)
分娩後の日数 平均(kg/日) 範囲(kg/日)
分娩日 3 1.44〜5.12
3日 4.2 2.16〜6.66
7日 6 4.11〜8.52
14日 7.9 4.86〜10.92
21日 7.9 4.65〜10.68
28日 7.5 3.63〜12.42
授乳中母豚は哺乳豚数に比例して水分要求量が増加します。
この文書は日本養豚事業協同組合のゆめ通信第5号(2002年7月)に大井宗孝先生が寄稿された記事から一部を使用させて頂きました。大井先生並びに豚事協の皆様に深謝いたします。
表2 母豚の水分要求量
要求量(リットル/日)
育成豚 5.0〜8.0
経産豚 5.0〜9.0
授乳中の豚* 15〜30
*水分要求量:豊浦獣医科クリニック 大井先生
泌乳量:白河種牧茨城支場のデータより

(文責 TS部 東 克士)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60630
休薬期間内で消毒ができない?
〜ポジティブリスト制度について考える〜


 本年5月29日にポジティブリスト制度が導入され、ひと月が経ちました。農場の皆さん向けにも様々な方面からの情報が入っているとは思いますが、新しい考え方でもあり、多くの方から制度に関する質問をお受けしています。また我々も質問を受けて、「そういえば、こういう場合はどうなんだ?」と考えさせられるケースも多くあり、把握できていない内容については、調べつつ確認しながらお答えしています。そこで今回は、消毒剤の使用についてご紹介します。

 ポジティブリスト制導入に伴い、動物用医薬品の使用に関しても、特に休薬期間や使用禁止期間の変更が進められています。動物用医薬品検査所(動薬検)のホームページに紹介されている、「休薬期間に注意すべき動物用医薬品」の中には、塩化ジデシルアンモニウムを有効成分とする外皮噴霧剤(いわゆる逆性石けん製剤)があり、これを畜舎や出荷用トラックの消毒に使用されている方も多いと思います。以前はこの消毒剤に休薬期間の設定はありませんでしたが、ポジティブリスト制度導入後、牛豚では畜体5日間の休薬期間が設定されました。

 ここでひとつ疑問が浮かんできます。出荷直前に畜舎や出荷用トラックを消毒した場合に、出荷まで立派に育てた動物に消毒剤が付着し、残留基準に引っかかってしまう心配はないのでしょうか。そんなことなら消毒をしない方がいいのでは―と考える方もいらっしゃると思います。

 この疑問に対し、やはり動薬検HP内のポジティブリスト制度のQ&Aによれば、「外皮消毒剤の休薬期間は、その消毒剤を畜体の消毒を目的として直接噴霧または散布した場合に適用される。」(質問No.18)と記されており、上記のようなケースの偶発的な暴露には適用されないということです。よってこれまで通り、畜舎やトラック等の資材の消毒はしっかり行って全く問題ありません。

 ただし、食品(食肉)から消毒剤の成分が基準値を超えて検出された場合は、やはり食品衛生法違反になりますので、消毒剤がなるべく豚にかからないよう注意は必要です。しかし、豚の表皮に多少の消毒剤が付着しても、枝肉に基準値以上の消毒剤が残留する可能性は高くはないと考えられますので、農場に病原体を持ち込ませないためにも、しっかり消毒を行うことが大切です。

 詳しい内容は動物医薬品検査所ホームページにありますので、ご参照下さい。
動物医薬品検査所URL:http://www.nval.go.jp/

(文責 検査センター 鶏尾めぐみ)

検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60529
夏の暑さはペットボトルで乗り切ろう。

 今年ももう6月になってしまいました。そろそろ母豚が暑さのストレスを受け始める季節です。昨年も母豚が夏の暑さのストレスを受け、夏生まれの哺乳豚が十分な母乳を飲めずに体調を崩し、その子豚が秋以降に離乳舎で疾病の影響を受ける、といった悪循環に陥った農場が少なくありません。加えて夏バテした母豚たちは、秋以降の繁殖成績が悪く、その影響から立ち直るのに春先までかかった農場もあります。
 母豚を夏の暑さのストレスから守ることは、安定した農場成績のための最重要ポイントであることは間違いありません。暑熱対策については過去から様々な方法が試されてきましたが、ここ数年ペットボトルを用いたドリップクーリングを取り入れる農場が増えています。まず2リットルのペットボトルに水を入れ、冷凍庫で凍らせます。凍ったペットボトルを分娩舎やストールにいる母豚の後頭部の上に逆さまに吊るしておくと、氷が段々解けてぽたぽたと冷たい水滴が落ちるというものです。

 通常のドリップクーリングと比較して、
(1)配管などの設備がいらない事
(2)最後まで冷たい水が落ちる事
(3)特に暑がっている母豚に集中的に処置できる事

等の利点があり、手軽で効果の高い方法です。実施にあたり、数シーズンこの方法を実行している農場の方からいくつかのポイントをお聞きしましたのでご紹介します。

1)ペットボトルは時間をかけてよく冷やすこと
 家庭用の冷凍庫では、凍って間もない氷の温度はまだ−数℃だそうです。豚舎内でゆっくりと溶かすには−20℃程度まで氷を冷やしておく必要があります。2〜3日かけてゆっくり凍らせるか、中古の業務用冷凍庫を買うのもいいかもしれません。

2)取り付けは午前中に行うこと
 上記のようにゆっくり凍らせた氷は、解け始めるまでに時間がかかります。既に暑くなっている昼頃から設置しても手遅れです。朝のうちに設置しておけば昼頃に丁度ピークになり、5〜6時間は持続できるそうです。

3)ストールの端に取り付けること
 分娩舎でもストールでも、母豚の柵の中心ではなく、左右どちらかの端に取り付けるのがコツです。端に取り付ければ、母豚が後頭部にドリップを受けるときには横向きに寝ることになり、自然に授乳の姿勢になります。またドリップがいやなときは、反対側によければ避けられます。

 以上、簡単なコツをお知らせしました。このようなちょっとしたアイディアが母豚を暑さから救います。まだ経験のない方はぜ一度お試しください。

(文責 検査センター 矢原芳博)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60428
ホルモン剤って難しい? 〜ホルモン剤の使い方〜

 先日、ある農場の方から「ホルモン剤はたくさんの種類があって使い方が分からない。分かりやすくまとまっている表などはないものか」というお話を伺いました。ホルモン剤は正しく使えば良好な効果が得られますので、各ホルモンの特性を正しく認識して選択・使用することが大切です。そこで今回は、ホルモン剤の使用法についてまとめてみました。


表1.豚の繁殖における主なホルモン剤の使い方

  効能・効果 使用薬剤(剤形)
性腺刺激
ホルモン
PG類 子宮収縮薬 卵胞ホルモン
hCG PMS PGF2α オキシトシン スパルテイン エストラジオール
 交配  1.無発情 卵胞発育障害 
黄体遺残
2.発情誘起(同期化)
3.多排卵誘起
4.鈍性発情
分娩 1.分娩誘発
2.陣痛微弱
3.胎盤停滞
授乳 1.泌乳不全
2.射乳促進

<交配>
1. 無発情の治療
(1) PMSまたはhCGの単独投与で卵巣の発達を促し発情を誘起する。2〜5頭の群飼とし、雄豚と接触させる。
(2) PMS注射で発情を誘起し、交配直後にhCG注射で排卵を促し黄体を形成する。
(3) (1)または(2)でも発情が来ない場合は、黄体遺残の可能性があるので、PGF2_(ジノプロスト)の朝夕2回注射を3日間連続実施する。
2. 分娩後の発情誘起(発情の同期化)
(1) 離乳後1〜3日にPMSまたはhCGの単独投与で発情の同期化を図る。
(2) 離乳後1〜3日にPMSを注射し、48〜96時間後にhCGを注射することで、排卵時期をhCG注射後40〜48時間に同期化する。
(3) hCGとPMSの複合製剤(スイゴナン)もあり、未経産豚の発情誘起にも適用。
3. 多排卵誘起: 産子数増加を目的とし、離乳後1〜3日にPMSを注射する。
4. 鈍性発情 : 発情が明瞭でないとき、エストラジオールで発情を促し、交配成功につなげる。

<分娩>
1. 分娩誘起(分娩の同期化)
妊娠113日目の朝にPGF2_を注射すると、大部分の豚が翌日中に分娩を開始する。分娩管理の省力化と子豚の損耗減少が可能。
2. 陣痛微弱
(1) 陣痛微弱の場合(分娩が長引いたときなど)、オキシトシンまたはスパルテインで子宮の収縮を促す。
(2) オキシトシンの感受性を高める目的で、(1)の前にエストラジオールを注射することもある。
3. 胎盤停滞:分娩後3〜4時間以降でも後産が出ない場合、スパルテインを注射。
<授乳>
1. 泌乳不全: 子宮・乳腺の発育異常による泌乳不全にはエストラジオールを注射。
2. 射乳促進: 乳房炎の治療のとき、オキシトシンで乳汁の排出を促す。消炎剤・抗生 物質と併用。

  剤形 作用 商品名
性腺刺激
ホルモン
胎盤性性腺刺激
ホルモン (hCG)
LH様作用があり、排卵を促し、
排卵後の黄体を形成
ゲストロン、ゴナトロピン、
コリホルモン、プベローゲン
妊馬血清性性腺刺激
ホルモン(PMSG)
FSH様作用があり、卵巣の発達を促し
発情の誘起・同期化
セラルモン、セロトロピン、
PMS、ピーメックス
プロスタグ
ランジン
(PGF2α)
ジノプロスト 分娩誘起
(妊娠黄体を退行させ分娩を同期化する)

離乳時に黄体を退行させ発情を促進
パナセラン、プロナルゴン、
ベタグランディン
クロプロステノール プラネート、オンステージ、
クロプロスター、レジプロン、
クロプロステノール
エチプロストン プロスタベット
子宮収縮薬 スパルテイン 子宮の収縮 スパルテイン
オキシトシン 子宮の収縮、乳汁の排出など アトニン、オキシトシン、
ヒントシン、ポストン・エス
カルベトシン カルベトシン オキシカルニチン
卵胞ホルモン エストラジオール 発情兆候、発情行動、子宮頚管の弛緩、
オキシトシンの感受性を高めるなど
エストラジオール、
ギナンドール
※商品名は、動物用医薬品用具要覧(2004年)に収載されているものです。


以上は一般的な使用例ですので、ご使用の際には獣医師等にご相談下さい。
(文責 検査センター 平内あかね)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60326
屠場サーベイ 〜肺病変スコアの有効活用〜

こんにちは、入社二年目の平内と申します。先月から検査センタートピックスを一部担当させて頂いています。先日、先輩獣医師が実施している屠場サーベイに同行する機会がありましたので、今回は屠場サーベイについてご紹介したいと思います。

 屠場に出荷された豚は、と畜検査で合格すると食肉になりますが、生産者の方々は出荷した豚の内臓病変の状態について、廃棄でもない限りはよく知らないのが実情だと思います。そこで、生産者に代わって屠場に入り、肺病変や鼻甲介の状態、内臓廃棄の原因などを調査するのが屠場サーベイです。今回は、各農場の肺病変の頻度と程度を評価するための肺病変スコアについて説明します。

 屠場に入ると食肉検査の邪魔にならない場所に陣取り、調査対象の豚が運ばれるのを待ちます。次々に流れてくる逆さに吊られた屠体から、手際よく切り離されてくる検査を終えた内臓を拝借し、肺を観察し病変をスケッチします。マイコプラズマ(MPS)様病変、典型的な胸膜肺炎(APP)病変である癒着、線維素、硬結感、出血、膿瘍などを肺の模式図に書き込みます。屠場の処理スピードにもよりますが、1頭にかけられる時間はわずか20秒と結構忙しい作業です。

 そのスケッチを持ち帰り、当社独自の採点システムに従い、それぞれの肺の病変の程度によって、0:著変なし、1:極軽度、3:軽度、5:中等度、7:重度とスコアをつけます。最終的に農場のMPSとAPPについてそれぞれの総合スコアが計算される仕組みになっています。

 各農場のスコアを並べてみると、農場の特性がよく現れてきます。肺病変自体ほとんど見られずスコアが非常に良い農場もあれば、MPSはコントロールできているのにAPPのスコアが悪い農場など様々です。経時的な変化でみても、「いやぁ、最近豚の調子がいいんだよねー。」という農場では、やはり数ヶ月前のスコアと比較すると格段に良くなっていることもあり、それぞれの農場の衛生レベルをよく反映しているなあと感じます。このような屠場サーベイに血清抗体検査などを組み合わせることで、農場の衛生状況を充分に把握でき、ワクチン効果の確認など疾病対策に有効な手段となります。

 屠場サーベイの実施に当たっては、屠場への立ち入りが可能であること、屠場サーベイを依頼できる獣医師の存在などが条件となります。しかし、実際に屠場に足を運ばなくても、最近では多くの屠場がと畜時の内臓検査の成績を農場にフィードバックしてくれています。このデータをよく解析し、自農場でどんな疾病が発生しているのかを判断する材料に活用していただきたいと思います。

(文責 検査センター 平内あかね)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60325
子豚の神経症状は、原因により治療薬を使い分けましょう。

 離乳前後の子豚が豚舎内で足をバタバタしたり、痙攣したりする症状に出くわすケースは、かなり多くの農場で経験されていることと思います。このような症状を総称して「神経症状」と呼んでいます。「神経症状」とは、通常は脳などの神経組織に侵入できないはずの病原体や毒素が、様々な原因で入り込んで起きる症状ですが、具体的には下記のような症状が挙げられます。

1. 痙攣(四肢を小刻みに震わせる)
2. 強直(四肢や胴体に力が入ったまま伸びきっている状態)
3. 遊泳運動(四肢をゆっくりと泳ぐように動かしている状態)
4. 眼球(瞳がぐるぐるとまわっている状態)
5. 後躯麻痺(下半身が麻痺して、後足が立てない状態)
6. 犬座姿勢(犬がお座りするような姿勢で、後足を投げ出している状態)

 これらの症状以外にも、無症状(症状を出す前に急死してしまう)、元気消失、食欲消失、ふらついて歩く、ボーッとしてじっと佇んでいる、首が曲がったままになっている(斜頚)といった症状が見られます。

 このような症状が見られた場合、そのほとんどのケースでは感染症が疑われます。たとえば、

(1)レンサ球菌病
(2)シガ毒素産生大腸菌症(いわゆる浮腫病)
(3)グレーサー病
(4)オーエスキー病   等々です。

 このうち、(1)〜(3)の細菌感染症については、初期症状のうちであれば抗菌性物質による治療の効果が期待できます。しかし使用する抗菌性物質の選択を誤ると、治療したことで子豚が死んでしまうという現象も起きるので注意が必要です。特に(2)のシガ毒素産生大腸菌症の場合、ある種の抗菌性物質には菌体膜を壊すことで菌を殺すものがあり、このような抗菌性物質を使用した場合には菌体の中に蓄積されたシガ毒素が、血中に一度に流れ込んで症状が一気に悪化します。

 農場で神経症状を見かけた場合、上記のうちのどの原因で発生しているものなのかを確認した上で、抗生物質の選択に入らなければなりません。浮腫病だからといって必ずしも目の周りの浮腫症状が伴うとは限りませんので、症状だけでこれらの疾病を区別することは困難です。できるだけ早いタイミングで発症豚の検査などを行い、原因をきっちりと確認した上で治療方針を決めていくことをお勧めします。

(文責 検査センター 矢原芳博)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60224
検査は採血から 〜採血についてのお願い〜

 当検査センターには、全国の農場から血液や糞便など様々なサンプルが送られてきます。農場の疾病状況を知るための貴重なサンプルですが、採材や送付の方法に不備があると、検査結果に影響が出たり、さらには検査が不可能になったりする場合もあります。そこで今回は、検査する立場から見たよりよい採血方法について紹介したいと思います。

 よい採血とは、溶血を避け、より多くの血清量を確保できる採血です。検査は血液から分離した血清を用いますので、溶血した検体で検査結果が大きく異なることや、血液量は多くても血清分離量が少ないと検査ができないこともありますので、ご注意下さい。

1)検体量について
 検査に用いる血清は血液から分離しますが、分離できる血清量は血液量の約1/3程度ですので、これを考慮に入れて採血して下さい。血清分離量は動物種により違いがあるようで、牛や豚に比べて、鶏では同じ量の血液でも分離される血清は少なめです。

2)溶血防止のために
 注射器で採血する場合は、採血後、注射針をはずし、試験管に静かに泡立たないようにゆっくり注いで下さい。凝固促進剤入りの採血管の場合は5〜6回転倒混和し、血液の凝固を促して下さい。またガラス採血管でも転倒混和により血液中の凝固因子が活性化し、凝固しやすくなります。  その後、室温(20℃前後)で30分ほど静置して下さい。特に冬場はご注意ください。

3)遮光について
 ビタミンなど、光により分解される成分を測定する場合は、明るい所に採血した血液を長時間放置すると、検査結果に影響が出ます。アルミホイルで覆うなどして、できるだけ光にさらさないようにして下さい。

4)送付方法
 振動や凍結も溶血の原因となりますので、なるべく振動を抑えられるように緩衝材等で保護し、保冷剤を入れる場合は直接サンプルに触れないようにして下さい。

以上が検査センターの立場からのお願いです。検査がより正確にできるように、ぜひご協力下さい。

(文責 検査センター 平内あかね 鶏尾めぐみ)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60223
子豚の切歯 〜やるべきかやめるべきか〜

 分娩舎で子豚が生まれると、去勢、断尾、切歯、鉄剤注射の4処置については、ほとんどの農場が実施していると思います。ところが最近、切歯について、その効果と弊害について様々な意見が交わされるようになってきました。

 切歯の目的については、「母豚の乳房を傷つけない」、「子豚同士の闘争による外傷を防ぐ」、「外傷に起因するスス病などの疾病を予防する」等々が教科書にも記載されております。では逆に、歯を切らなかったら上記のような問題が本当に起こるのでしょうか。あるいはこれらの問題の原因は子豚の犬歯にあるのでしょうか。切歯という習慣は、既に米国、ヨーロッパいずれの養豚先進国でも行われなくなっているということです。さらに日本でも、ある大手企業養豚場では過去何年間も切歯を実施していないそうです。これらの国々や企業養豚場では、切歯を行わないことで母豚が痛がり授乳をしなくなった、あるいは子豚の外傷やスス病が増えたという現象は起きていないか、無視できる程度だという事です。

 また「歯を切る事で歯肉炎が発生し、子豚が口の中が痛くて授乳できない、あるいは人工乳を食べない、あるいはレンサ球菌症にかかりやすくなっている。」のではないかという疑問も起きつつあります。切歯には通常ニッパを使用することが多く、ニッパで犬歯の先だけを切っていればいいのですが、ともすれば根元から「砕くように」割ってしまっている農場もあるようです。このような切歯の仕方をすれば、歯肉に傷をつけて口腔内の常在細菌により化膿してしまいます。人間でもほんの小さい口内炎一つで痛くてご飯が食べられなくなることを想像すれば、子豚の歯肉炎が母乳や人工乳の摂取に大きな影響を与えるだけでなく、口腔内の傷から感染が始まるといわれているレンサ球菌などの感染症の原因にもなりかねないことは理解できると思います。

 このような事が判ってきたわけですが、切歯は今後どのように進めればよいでしょうか。でも急にやめるというのは勇気が要ります。下記の段階を経てはどうでしょう。

1. まず自農場の子豚の切歯の仕方を再度チェックし、できるだけ先だけを切る。
2. ニッパを使うのをやめ、ヤスリで犬歯の先端を10回程度こすり先を丸める。
3. まず1週間分の分娩分の切歯を中止し、問題のある腹だけ後で切歯する。
4. 問題が無ければそのまま切歯をやめてしまう。

 この方法でまったく問題が無いか、あるいは離乳体重が伸びたり、レンサ球菌症の発症率が下がるという効果を得られる農場も少なくないはずです。なお本稿は、「ピッグジャーナル」の本年1月号の特集を参考にまとめました。さらに詳しくお知りになりたい方はそちらをご参照ください。

(文責 検査センター 矢原芳博)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60122
母豚のおりものと再発が気になったら

 この夏から冬にかけて、どの農場も繁殖成績が思わしくないという話題を先月しましたが、今月はこの中でも特徴のある繁殖障害について説明します。

 農場でストール舎を巡回していると、主に種付け直後から妊娠前半で、母豚が陰部から白いおりものを出しているケースに時々出くわします。白いおりものが出だして数日すると発情の再発が見られたり、場合によってはそのまま血尿をする母豚もあります。発熱や食欲不振を伴ったりする場合もありますが、母豚自体はケロリとしながらおりものだけ出している場合もあります。このような症状が見られる農場は案外と多いもので、なんとなく見逃しているケースもあるようです。

 このような症状が見られたらレプトスピラ感染症を疑ってみる必要があります。レプトスピラとは、小型のらせん状の細菌で、種付けの際に雄豚から感染したりします。レプトスピラ症は欧米では非常に感染率の高い疾病として認識されており、ワクチン接種率も高率に実施されているのですが、なぜか日本では注目度が低く、ワクチンすら市販されておりません。しかし本病が日本にまったく無いというわけではないらしく、沖縄を中心にいくつかの発症例が報告されています。

 妊娠中の母豚がおりものを出すケースとしては、飲水量の不足による尿結石症もありますが、尿結石症の場合は陰部にカルシウム等の結晶状の塊が見られます。おりものが出た場合には、尿結石症をはじめとして、他の疾病との類症鑑別が必要ですが、レプトスピラ症の血清診断は現在限られた施設でしかできませんし、菌の分離もきわめて難しいので、これらの方法で診断を下すには若干の時間がかかってしまいます。

 そこで、手っ取り早い方法として、いわゆる「治療試験」という方法があります。レプトスピラは、テトラサイクリンやストレプトマイシン等に高い感受性を示しますので、上記のようなおりものが見られ、再発が多発しているときには、ストールにいる母豚全体に、OTCまたはCTCあるいはストレプトマイシン(ストレプトマイシンは農場で実際に使用するとすれば、メイリッチPSが一般的でしょう。)を1〜2週間程度投与してみます。この処方後、おりものの発生や再発が減ってくれば、レプトスピラ症であった可能性が高いようです。

 ここ最近抗菌性物質の農場内での使用は減少傾向にあり、そのこと自体は好ましい傾向ではありますが、レプトスピラ症のような疾病に関しては逆に感染のチャンスが増しているのかもしれません。おりものが気になる場合には、検査センターまでご連絡いただければ、対策についてご相談に応じさせていただきます。

(文責 検査センター 矢原芳博)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.60121
豚の常識、牛の非常識

 昨年末より検査センターを離れ、これまでの肉牛農場に加えて養豚場へ伺う機会が増えました。改めてそれぞれの農場を比較すると防疫面から見てあまりにも大きな差を感じさせられたことから、今回は啓蒙のためにいくつかの事柄を提言させていただきたいと思います。

 養豚場を訪問する場合当たり前のこととして、入場時に場内専用の衣服・長靴に交換します。これはいうまでもなく外部からの病原体の持ち込みを防ぐためです。さらに入浴してから入場する農場も珍しくありません。一方牛の農場では、糞がついたままの作業服や長靴で訪問客が自由に出入りしている例がほとんどです。どちらが衛生面から問題ないかは明らかですね。牛の農場でもせめてお客様用長靴と消毒槽を用意しましょう。

 病原体を持ち込む危険性では、やはり外部から導入される豚や牛が最も高いと考えられます。豚の場合、導入前の検査による陰性証明さらに導入豚の隔離措置や馴致期間の設定などは必須項目です。ところが市場から導入されるスモール、素牛については、導入時の衛生プログラムを実施している農場は少数ながら存在しているものの大半の農場ではフリーパスというのが現状ではないでしょうか? 生産農場も母牛の感染状況も異なる雑多な集団が何を持ち込んで来るのか不明な中で、導入時の衛生プログラムを作りましょう。

 出荷時の屠場(一部市場もあり)も多くの生産者が集まる場所であり、そこへ運搬した車両も他の生産者由来の病原体で汚染されている可能性があると考えられます。この車両の使用前後の消毒や場内への入場制限なども養豚場では当たり前ですが、牛やさんではどうですか?

 ひとたび農場内に病原体が侵入してしまうと根絶することは大変困難であり、また初発の場合など大きな被害を蒙ることがあります。養豚業界ではこれまでの痛い経験を生かして防疫対策を徹底しています。肉牛農家や酪農家においても、大きな被害を出す前に予防策を講じましょう。

 牛の非常識が畜産業界の常識に変わるお手伝いをさせていただきます。ご遠慮なく検査センターにお問い合わせください。

(文責 検査センターOB 大久保幸弘)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.51220
夏場の母豚へのストレスは冬場の繁殖障害につながる

 毎年11〜12月の種付け分娩率は、夏場の暑熱ストレスを受けた母豚が種付けされた影響で数%程度下がるのが通例ですが、昨年今年とその落ち幅が非常に大きくなっているように感じます。農場によっては通年の分娩率から10〜20%以上低下しているケースもあり、これは日本全国で見られる傾向です。特に今年は11月以降の再発が非常に目立ち、不受胎または早期の胚の死滅によるものと思われます。分娩率が下がった時点ではもはや結果の段階であり、対策といってもなかなか難しいのが現状です。とはいえ、どの農場も夏場の暑さ対策をできる限り実行していてこの状態ですから、現時点で可能な対策を考えてみたいと思います。繁殖成績をできるだけ早く回復させるために必要な対策です。

●繁殖成績回復のための対策

1. 分娩舎を暖めすぎていないか

冬場の分娩舎のトラブルは冷える事ではなく、むしろ暖めすぎによるものです。

分娩舎の温度は25℃を越えると、母豚の食下量は一気に減ってしまいます。 母豚にとって分娩舎は15℃程度が最適です。舎内の温度差はストレスにつながるので、ストールと分娩舎の温度差、分娩舎内の日較差、前日との最高温度の差等は、5℃以内に抑えることが目標です。

この時期、分娩舎の温度を思い切って下げるために、保温箱は必須のアイテムです。 隙間風の吹き込まない、しっかりとした蓋のついた保温箱を用意しましょう。母豚は涼しく、子豚は暖かくが大原則です。

母豚の飲水の流量は、冬でも毎分1.5〜2.0l以上必要です。 ピッカーの調節をしたり、飼料給与後、飼槽に水を入れたりしてたっぷり水を飲ませます。

2. 痩せすぎ母豚は寒さに弱い

夏場の食下量の低下で母豚群は痩せすぎていませんか?
痩せすぎの豚は寒さをもろに感じてしまいます。

冬場の母豚は体温維持で通常時期の10〜20%増しのエネルギーが必要です。 舎内温度に合わせ、ストール舎の妊娠母豚の飼料給与量を1〜2割増やしましょう。

最近の母豚は体型が大型化傾向にあり、それでなくても飼料摂取量は増えつつあります。

痩せ方の激しい豚には、混合飼料でカロリー、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を補ってやりましょう。さらに生菌剤による母豚の一般健康状態のアップも良い方法です。
(当社の「種豚ヘルス」や「腸健康!」が使用できます。)

3. 種雄豚も大事です

夏場に発生した精子の異常が、そのまま冬場まで続いている事もあります。精液チェックは定期的に実施しましょう。

(文責 矢原)
検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.51119
やはりSPAYは素晴らしい!

 雌牛肥育における卵巣摘出手術(SPAY・スペイ)については、これまでも業界誌や学会報告などにより、その有用性を実証して参りました。しかし、まだまだPR不足のため、現在でも手術法や摘出器具(モウカッター)についてのお問い合わせを検査センターにいただいております。そこで今回はSPAYについての総括をしたいと思います。


1. なぜSPAYが必要?

 和牛、F1雌の群飼育において発情に伴う事故や損耗、さらに鳴き声騒音は大きな問題でありながら、これまで解決する手段はありませんでした。ホルモン剤による制御は犬猫とは異なり不可能なので、雌牛肥育農家では、その解決策が待ち望まれていました。これを解決する画期的方法がSPAYなのです。

2. SPAYはどうやるの?

 枠場に保定した雌牛の膣壁から腹腔内に当社が独自に開発した器具(モーカッター)を穿孔させ、直腸壁越しに左右卵巣を順に器具の収納部に入れ、卵管・血管を挫滅した後切断する方法により卵巣を摘出します。リスクを回避するために手術前に止血剤と抗生物質を投与します。概ね1頭あたり数分以内に完了します。

3. 使用する器具は?

 モウカッターは安全・確実に卵巣を摘出可能であり、操作性に優れているという大きな特徴を有しています。さらにアメリカ製の器具に比べて、不確実な摘出による卵巣再生の危険性が格段に低いことが大きなポイントです。(日本産業動物獣医学会発表)

4. 対象月齢は?

 これまでの知見から、肥育成績改善に最も有効であり、ストレスも極めて小さいSPAY最適月齢は和牛では生後10〜12ヶ月齢、F1では生後6〜8ヶ月齢と考えられています。

5. どんな効果があるの?

 SPAYされた牛では周期的な発情が全くなくなるため、乗駕による事故やアタリが激減します。2%台であった出荷時のアタリの発生率が0.1%まで低下した事例も報告されています。行動観察では群全体が落ち着いて反芻する時間が増加し、闘争時間が有意に減少することが確認されています。(西日本畜産学会発表)  この結果、日増体量(DG)の大幅な改善が多くの生産者で認められており、枝肉重量の増加の一例を右に紹介します。SPAY実施前と比べ、平均重量で約50kg以上の増加を示しています。さらに肉色(BCS)が薄くなり、平均で4.0を下回る事例が数多く見受けられます。


6. 危険性はないの?

 出血による事故を回避するために血管を挫滅してから切断する機構がモウカッターにはついています。さらに止血剤を併用することにより事故はほとんどありません。

7. 誰でもSPAYは出来るの?

 直腸検査の出来る獣医師であれば対応可能です。ただし、手術のポイントがいくつかあるため、研修を受けることをお奨めします。

8. モウカッターは販売しているの?

 当社で販売していますので関心のある方はお問い合わせください。

9. SPAYを活用している農場は見学できますか?

 和牛、F1肥育牧場での活用事例をいくつかご紹介出来ますが、都市近郊での和牛群飼にSPAYを長年に渡って活用してきた三重県の和牛一貫肥育牧場はいつでも見学可能です。

 世の中にこのような素晴らしい技術があることをご存知でしたか? 百聞は一見に如かずです。雌牛肥育にSPAYは大変効果的です。

 さて、私事で恐縮ですが、今月を持って検査センターを離れることとなりました。今後は別の職場からSPAYや防疫対策などに取り組むこととなります。検査センタートピックスの反響にいつも驚かされておりましたが、今後とも皆様のご愛読を切にお願い申し上げます。

               

(文責 大久保幸弘)

検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.51018
豚のワクチンの効果が上がらない場合に

 豚の繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の陽性農場では、子豚期に様々なワクチンを接種するものの、その効果がはっきりと現れないケースがよくあります。今回は、このような場合にチェックすべき点をご紹介します。

1)移行抗体と感染抗体の谷間で接種

ワクチンにはその種類ごとに推奨接種プログラムが決められており、これに沿って接種すると最も高い効果が得られるはずですが、農場ごとの状況によって接種時期の調整も必要です。特に子豚に接種するワクチンについては、その疾病の感染、発症時期とワクチン接種のタイミングは非常に重要なポイントです。生後7週齢で抗体陽転する場合、その2週間前頃に感染していると考えられるので、3週齢に接種しておけば効果が得られるでしょう。ちょうどこの時期は移行抗体が消失する時期と重なっており、移行抗体によるワクチン効果の阻害も免れるはずです。しかしPRRSなどの疾病は、移行抗体が切れてから感染までの期間が非常に短く、また移行抗体の消失時期もかなりばらつく事が多いので、豚群全体の移行抗体が切れる時期と、いずれかの子豚の野外感染が始まる時期は重なってしまうケースがほとんどです。このような状態下では、どの日齢でワクチン接種をしても効果を上げる事が出来ないため、子豚への接種は中止したほうがいいでしょう。まず母豚群の抗体価を高く揃え、子豚の移行抗体を安定させ、移行抗体が切れてから野外感染が起きるまでの「空白の期間」を作る事が大前提です。それが出来れば子豚期でのワクチン接種の効果は上がるはずです。

2)接種が疾病を増悪する場合

 接種の仕方やタイミングの問題でワクチン本来の効果を発揮できない場合の他に、ワクチンを接種した事で、他の疾病を増悪してしまうケースも報告されています。PRRSウイルスやサーコウイルス2型などが3〜4週齢で感染開始している豚群では、この時期に接種したワクチンがこれらのウイルスの症状を増悪するケースがあります。ワクチン接種は1頭1針が基本ですが、現場ではそうでないケースがまだまだ多く、ワクチン注射器を介して人間がウイルスを広めているケースも見受けられます。さらにワクチンの一部の成分がウイルスを活性化させるケースも、まれですが報告されています。この場合とりあえずワクチン接種日齢を前後どちらかに1週間程度移動する事で症状が改善する事があります。

 せっかく接種したワクチンが十分な効果を得られるように、上記のようなポイントを常に確認していく必要があります。  

(文責 矢原芳博)

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No.51017
こんな突然死もあります

 交雑種(F1)肥育農家で、生後10カ月過ぎの牛が3頭ほど立て続けに起立不能となり、数時間のうちに斃死するという事例に出会いました。発熱やその他臨床的な異常を示さず短時間で急死したことから生産者も驚き、関係者の緊急招集が行なわれました。

 当該地区では、以前から悪性水腫や壊死性腸炎による斃死が散発していたことから、クロストリジウム感染症5種混合ワクチンを接種しており、また乳頭糞線虫対策としてポアオン製剤の使用も徹底していたことから、突然死のリスクはかなり低減されたものと考えられていただけに、生産者の衝撃は大変なものでした。

 上記の各疾病以外にも突然死または急性死を引き起こす代表的なものとして、ヘモフィルス・ソムナス(現在ではHistophilus somni)感染症やビタミンB1欠乏症などがありますが、今回の事例では斃死までの症状や疫学的考察から可能性は低いと判断されました。実際に、斃死した牛の剖検所見や血清抗体検査さらに糞便検査などでは上記疾病の関与を疑わせる結果は得られませんでした。

 しかし、関係者の懸命な調査の結果、今回の突然死はボツリヌス症であることが判明しました。
本症はClostridium botulinumの産生する毒素を経口的に摂取することにより発生する疾病であり、ボツリヌス毒素によりコリン作動性神経節および神経筋接合部の興奮伝達を特異的に遮断し、その結果として起立不能や筋肉の弛緩麻痺を引き起こし、斃死に至らせるものです。以前、熊本名産のカラシレンコンによるボツリヌス中毒がヒトで話題になったことがありましたが、牛においてもボツリヌス毒素で汚染されたサイレージや乾草などが原因となって発生することが報告されています。  残念ながらクロストリジウム属の細菌ではありますが、5種混合ワクチンでは予防できませんし、有効な治療法もありません。本菌が増殖しやすい腐敗・変敗動植物が混入した可能性のあるサイレージや乾草、あるいは高水分サイレージの給与を避けることだけが確実な予防法です。

 このように、ワクチンや抗生剤の投与だけでは対処出来ない事例はたくさんあります。日常的な餌の管理方法について見直してみましょう! 

(文責 大久保幸弘)

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No.50916
秋口からの呼吸器病対策について(その2)

 前回は、秋口からの豚の呼吸器病対策として子豚に当たる風と温度について述べましたが、今回は湿度にまつわる注意事項について述べてみたいと思います。

●日本の冬は乾燥しやすい

 日本中の秋口以降の気候で共通して言えるのは湿度の低さです。冬場はもちろんですが、秋晴れのカラッとした気持ちのいい日の湿度も50%を切っていることがしばしばです。では湿度が低いことがなぜ呼吸器病に悪影響を及ぼすのでしょうか。それは喉から気管、気管支にかけての粘膜が乾いてしまうために、本来局所で働くはずの免疫が効果を発揮しなくなるからです。

●豚舎内の適正な湿度は?

 舎内温度と違い、湿度については分娩舎から肉豚舎まで共通の目安で構わないと思います。相対湿度で60〜80%に保つことが適当だと思います。一般に湿度が50%を切ると、前述したような上部気道の粘膜が乾燥し微生物の感染を受けやすくなります。

 さてここで湿度と言っているのは相対湿度のことです。相対湿度とは、「ある温度の時、その空気が含有できる最大の水分を100%として表した空気中の水分量」の事です。つまり空気中の水分は同じ量でも、室温が変化すると湿度も大きく変化するのです。一般に温度が高いほど、空気が含有できる水分量は多くなりますので、同じ空気を暖めると湿度は下がり、冷やすと湿度は上がります。舎内温度は出来るだけ一定に保つ事が理想ですが、オープン豚舎などは、なかなかそうはいきません。一日の温度の動きと同様に湿度の動きも追跡していく必要があります。

●高い湿度も豚には悪い

 とにかく湿度を上げればいいかというと、これもまた豚にはマイナスです。湿度90%以上を越えますと、豚体表面が濡れてきて、これに微風でも当たれば豚の体感温度は一気に下がります。湿度過多の離乳舎で朝方に子豚が感じている寒さは、室温以上のものがあることを知っておく必要があります。また豚舎内での水分の発生源として、ガスブルーダーや豚そのものも馬鹿に出来ません。肉豚舎に朝一番に入っていくと、豚房の中で肉豚がかたまって寝ていて、そこから湯気が立ち上っている事がよく有ります。蜜飼いの豚舎では、豚が排出した水分で豚が濡れて冷えて、肺炎を起こす事もしばしばです。

 さらに、壁がカーテンで、天井がなく、屋根に断熱材の張っていない豚舎では、秋〜冬に豚舎を締め切ると、とたんに結露するケースがよく有ります。湿度過多の原因として、この結露は非常に問題です。豚によくない事も有りますが、設備の耐久年数が一気に短くなってしまいます。天井を張るか、屋根の内側に断熱材を吹き付けるなどの対策は、想像以上に湿度対策に大きな効果をもたらします。  以上、2回にわたって秋口の呼吸器病対策としての舎内環境について述べてみました。どれも基本的なことですが、この機会に再度チェックをお願いします。

(文責 矢原)

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No.50915
BVD持続感染牛を徹底的に摘発・処分しよう

 牛ウイルス性下痢・粘膜病は、成牛では軽度の発熱と呼吸器や消化器症状を起こし、胎児感染した場合には流産や奇形、さらに持続感染牛を発生させるウイルス性疾病です。この持続感染牛とは胎齢40日頃から130日頃までの間で牛ウイルス性下痢ウイルス(以下BVDウイルス)の感染を受けた場合に産出された牛であり、BVDウイルスを自己と認識(免疫寛容)してしまうため、終生体内にウイルスを保持し、鼻汁・糞便・尿中に大量のウイルスを排泄し続けるという極めて厄介な感染源になります。因みにウイルスの排泄量は以下のように報告されています。

鼻腔スワブ 103〜105 TCID50/ml
尿 103〜104 TCID50/ml
血清 102〜106 TCID50/ml

 この持続感染牛は生後1〜2年以内に死亡してしまうこともありますが、慢性的な下痢を示す場合や複合感染や日和見感染を引き起こす場合、致死的な粘膜病に移行する場合や中には外見上の異常を認めない場合もあります。この持続感染牛が妊娠・出産した場合にはその子牛もまた持続感染牛になってしまうという危険な連鎖が断ち切れないこととなってしまいます。

 現在北海道ではBVDを撲滅しようという運動が関係者を挙げて取り組まれていますが、全国的には残念ながら持続感染牛が各地から検出されるようになってきています。この秋の日本産業動物獣医学会(関東支部)でも群馬県や東京都からの新たな報告がなされています。またBVDによる被害は肉牛だけでなく酪農においても乳量の減少、受胎率の低下、さらに治療費の増加などが報告されています。

 対策としては第一に持続感染牛の摘発淘汰が必要です。発育不良牛や慢性的な下痢、肺炎が続く牛などはウイルス抗原の検出や抗体検査による病性鑑定を実施する必要があります。さらに最も重要な対策として持続感染牛の子牛を分娩させないために、繁殖雌牛の種付け前にBVDワクチンを接種しておくことがあります。現在使用可能なワクチンとしては不活化ワクチンのストックガード(共立製薬)とBVD1型と2型のみ不活化のキャトルウィン6(京都微研)があります。種付け前であれば両方とも、妊娠中であればストックガードを使用します。成績改善のポイントとして是非ご検討ください。

(文責 大久保幸弘)

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No.50814
秋口からの呼吸器病対策について

 台風が去って、朝晩の気温もようやく下がり始め、人間にとっては過ごしやすい季節になってきました。しかし豚にとっては、ほっとする間もなく呼吸器病の好発時期がやって来ます。今回は養豚場における秋口の呼吸器病対策(特に環境面での対策)についてまとめてみようと思います。

呼吸器病は秋口と春先に多い!

 豚の呼吸器病は真冬よりも秋口と春先の方が発生率が高い傾向があります。つまり豚は、豚舎内の絶対温度よりも、温度の差(日格差、昨日と今日の温度差)に敏感に反応するのです。特に豚舎内の最高温度と最低温度が10度以上になると、呼吸器病の発生頻度は非常に大きくなります。

舎内温度の日格差を縮めるためには

 離乳舎、分娩舎では、ガスブルーダーやコルツヒーターなどの加温設備がありますから、最低温度を高めることは可能です。しかし、肉豚舎には加温設備がないのが普通ですから、最低温度を上げることはできません。むしろ朝方の最低温度に合わせて、日中の最高温度が上がらないように換気をとることが重要です。昼間の換気は大胆に、短時間に舎内の空気をそっくり入れ替えるつもりで行ってください。さらに離乳舎、分娩舎でも、朝晩が寒いからといって、暖房を昼間までつけっぱなしにすると、昼間の温度が上がりすぎて子豚にストレスがかかってしまうことがよくあります。暖房のスイッチとカーテンの開け閉め、ファンのインバーターの調節は、この時期一番頻繁に行わなくてはなりません。また、日毎の寒暖の差も激しい季節ですから、毎日の天気予報も必ず参考にしてください。長期予報についてはまだまだですが、明日の朝の最低気温については、最近の天気予報は本当に正確になってきました。これを利用しない手はありません。

子豚に当たる風は微風でも厳禁

 特にPRRSなどの慢性ウイルス病のある農場では、子豚に直接当たる風は呼吸器病の引き金になります。ひどい場合には、風が当たった瞬間に咳を始める豚がいます。子豚に直接の風を当ててはいけないということは昔から言われていることです。非常にかすかな風でも、絶えず吹いていてペンの中に逃げ場がない場合、子豚のストレスは意外に大きいものです。通路に立っているだけでは感じられない風でも、子豚が参ってしまっているケースがよくあります。ペンが広ければ、ペン内に風除けを設置するだけで豚が見違えることもあります。風除けとして保温箱を置けば、豚舎全体を暖める必要がないので、換気量も最小ですむはずです。

 以上、秋口の呼吸器病対策としての豚舎内温度の調整について簡単にまとめてみました。次回は湿度について考えてみたいと思います。 

(文責 矢原)

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No.50813
あなたの寄生虫対策は万全?

 これまでもこのトピックスで内部寄生虫駆除による肉牛育成成績や肥育成績改善の事例を紹介して参りました。(検査センタートピックスNo.40310およびNo.50305参照)農家さんでも導入時などに牛の背中にポアオン製剤をかける光景をよく目にするようになりました。

 そんな中で、ポアオン製剤を使用していたにもかかわらず不幸にして乳頭糞線虫の寄生によると推定されたホルスタイン子牛の連続突然死をたまたま目の当たりにする機会を得ましたのでご紹介いたします。

 酪農家から導入されたホルスタン哺育牛の育成農場では、肺炎対策として導入後1ヶ月以内とその3ヶ月後に生ワクチンを接種し、さらに外部・内部寄生虫対策として導入1ヶ月以内にポアオン製剤を使用しており、素牛として販売するまでほとんど事故の発生のないことが自慢でした。ところが、ある日突然生後3ヶ月齢前後の子牛4頭が立て続けに何の前触れもなく、突然斃死するという大問題が発生しました。何しろ無事故が売り物であっただけに農場としては大変困惑し、検査センターへ相談が持ち込まれました。

 突然死の原因として代表的なものには、ヘモフィルス・ソムナス感染症、クロストリジウム感染症、乳頭糞線虫感染症などや何らかの物質による中毒などが挙げられますが、現地で確認したところ突然死はある牛房に限定しており、下痢や食欲不振などの症状もまったく認められないことが判明しました。ちょうど現地で確認中にも目の前で、普通にエサを食べていた子牛が突然倒れ5分もしないうちに死んでしまうというショッキングな光景も見ることができました。斃死直後の牛や同居牛の血液・糞便検査の結果、細菌感染症の抗体はすべて低く、乳頭糞線虫卵が全例の糞便から検出されました。

No. 1 2 3 4 5 6
虫卵数 3,940 954 2,315 58 1,326 587

 糞便1gあたり、この程度の虫卵数でも問題が起こる可能性が示唆されました。
 現地では直ちに2回目のポアオン製剤の塗布を実施したところ、その後の事故はなくなり、糞便中の虫卵数もほとんど検出されなくなりました。さまざまな場所から導入されてくる牛に対しては、ポアオン製剤は1回だけでなく、生活環を考慮して3ヶ月程度経過したところでのもう1回がポイントと言えます。さらに日頃からの健康診断による感染状況の確認も重要ですね。  

(文責 大久保 幸弘)

検査センター TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514
 


No.50712
ワクチンは打っているのに‥‥

 せっかく疾病予防のためにワクチンを接種しているにも拘わらず、その効果を確認出来ないとのお話を伺うことが時々あります。どうしてこのような事が起きてしまうのでしょうか? ちゃんと用量・用法もきちんと守ったのに効果がない場合には移行抗体の影響により生ワクチン中のウイルスが不活化されてしまっている場合(いわゆるワクチンブレイク)が無視できません。

 下表はワクチン接種時の移行抗体レベルによる、抗体上昇を示した個体の割合を表しています。

抗体価 <10 10 20 40 80 160 320
割合(%) 99